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 「夏・野球=少年→旅」

 今年も高校野球の季節がやって来る。

 野球というスポーツのポジションが時代とともにどのように変わってきているとしても、甲子園を目指すひたむきさと、プレーに取り組む純粋さで人々の心を熱くする、好きな人にはたまらない、いわば全国レベルでの夏の定番行事の季節がやって来る。

 私はもう20年以上、その地方予選中継のカメラマンを続けている。
主な現場は和歌山と滋賀。どこの県も同時期に開催されるものだから、両県を行ったり来たりし、時にはさらに他県を担当したりする。今年も和歌山から滋賀の彦根へ移動し、また和歌山へ。それを3回ほど繰り返す。私のいわばミニ巡業である。そして各球場では、蝉の声を聞き、ぎらつく陽光に汗をしたたらせながら、望遠レンズの装着されたカメラを降りまわし、さまざまな場面をシュートする。応援団の期待を一心に背負ったエースの腕から渾身の力で放たれる速球。野生動物のような俊敏さでボールに飛び付いた後の内野手の矢のような送球。眼で捕捉し、打球音から予測した地点へ見事に走り込んだ俊足外野手の捕球。そして、日頃鍛えしスラッガーのバットから打ち放たれ、青空へ溶けようとする白球。そう、私も球児たちと同じように白球を追いかけているのだ。

 そんな風に、野球少年たちと心が同化していると自分勝手に思っている毎年のこの時期、私の心は少年時代に戻り、叔父が監督を務めていた少年野球チームの試合で初めて打ったヒットの感触や、プロ野球選手であった祖父のことを思い出し、さらには、友達との昆虫採集や、子供ながらに無常を感じた線香花火や、出身地である京都の風物を思い出したりするのである。

 そして、ミニ巡業が日常となるこの時期に、日頃は心の奥に封印されている旅への憧れも大きくなるのである。というのも私は、いったん遠方、特に海外などにロケにでも出てしまえば、いつも帰りたくなくなり、出来うることならばそのまま留まり、いっそ住んでしまいたいなどと、結構真剣に、そして切実に思ってしまうのだ。

 そんな私の心を踊らせるのは、映画ならロードムービー。憧れるのは、大衆演劇やインディーズバンドのツアーだ。ワゴンやバンに衣装や機材を積み込み、それらに囲まれ移動する。あの町からこの街へ、何かを届けに走って行く。メンバーと何でも分かち合い、時にはぶつかり、喧嘩する。人と別れ、無常を感じ、だからこそ新たな出会いに感謝する。

 先頃現役からの引退を表明したサッカー選手とは、比べようもない小さなスケールではあっても、私もやはり、人生とは旅であり、旅とは人生なのだと思うくちなのだ。いや、多かれ少なかれ、たぶん男には誰にでも、そういう部分があるのだろう。    
                             06.夏(文 / 黒田クーリー)